出会い系で知り合ったメル友の人妻と、ひょんなことで不倫関係になった。
彼女は瑠璃子さん、三十五歳。僕と同じ盛岡市の人で、おでこが広くてしっとりした雰囲気のある美人。グルメな人妻で、どの店のパスタが美味しかったとか、スペイン料理なら何たらという店がおススメとか、食べ物の話題が中心。僕も美味しいものには目がないので、こちらからもグルメ情報を提供して情報共有した。
そんな瑠璃子さんが、ある日気になるメールを送ってきた。
「ちょっと相談。夫が変なものを持っているの」
写メを見ると、整髪料のような、精力剤ドリンクのような、直感的には実体をつかみにくい長方形の箱。何か特別なことを実現する商品に見え、好奇心がわく。
「英語の文字ばっかりでわからないけど、カップホールとか書いてある。これ何? 知ってる? マグボトルの一種かな」
ぴんときた。間違いなく使い捨てオナホールだ。千円以下で買えるし、ちょっと贅沢に抜きたいときなど重宝する。でもそれが男性用のアダルトグッズであるとは言いにくい。
「写真だけじゃわからない」
「じゃあ実際に物を見てほしいわ。時間作れるかしら」
相手が人妻でも、お茶飲みながら会話する程度なら問題ないだろうと会うことにした。写真ではストレートのセミロングだったけど、会ってみたらエレガンスにカールしていた。少しそそられる。
「これ何? これと似たようなものを何個も隠してたのよ」
僕は他のお客さんに見られないように箱を両手で隠し、言葉に詰まる。色々考えるがいい嘘を思いつかず、男が自分を慰める道具であると正直に教えた。
「ええ・・・? 本当なの? これに入れるわけ? ちょっと、やだあ・・・」
呆れた目でカップホールを見つめる。僕は男として恥ずかしくて仕方ない。
それから会話が変な方向に流れた。一度夫以外の男性に相談したかったとか言って、性生活の悩みなどを打ちあけてくる。僕が親身になって耳を傾けるものだから話はどんどんエスカレートし、夫はたまにアダルト動画でオナニーしているとか、女のえげつない写真をコレクションしているとか、男はなぜそんなことをするのかと聞いてくる。普段グルメの話ばかりだったので、いささか困惑。
「男のオナニーなんかとまともに向き合わないほうがいいですよ。くだらないです」
「私という女がいるのに」
瑠璃子さんは興奮気味。何度も髪をかきあげる。
「本当、瑠璃子さんのような素敵な奥様がいるというのに。僕だったら・・・」
思わず言葉を飲みこむ。でも瑠璃子さんはその続きが聞きたいらしい。甘ったるい目で追及してくる。
「僕だったら、何?」
「僕だったら、瑠璃子さんを毎晩抱くのに」
そんなこと言うつもりはなかったが、むっちりした太ももと胸のふくらみを見ていると、その手のセリフと吐きたくなるのが男というものだ。
瑠璃子さんは目をしばたたかせながら太ももをきゅっと締めた。一気に妖しい空気が押し寄せ、その日のうちに男女の仲になった。
瑠璃子さんは寂しがり屋で、週に二回は会いたいとせがむ。困ったものだが、人妻とのセックスはとても気持ちいいので応じてしまう。
瑠璃子さんの局部に抜き差ししているとき、たまに使い捨てオナホールのことを思い出す。他愛もない玩具だが、男は真剣に抜き差しする。不倫セックスもそれに近いものがあると思う。いずれ捨てるものなのに、ピストンしているときは実に真剣だ。
僕のペニスも瑠璃子さんにとっては使い捨てディルドのようなものだろうな、とふと思う。
真剣にしゃぶってくれるが、いつ捨てられるかわからない。